魂の浄化

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ふっ………… すっかり人の姿に戻っていた俺に、再び断罪者としての力が内側から湧いてくる。 しかし、今までの水鏡のように冴えた力でも、体の底から熱を帯びた炎が全身を包むような力でもない。 どこか懐かしい…失ってしまったはずの記憶の底に眠っていた力が、呼び覚まされていく。そして、心の全てを満たしてくれる優しい温もりに抱かれたような、眩いほどの光が全身を覆っていく。 何をすればいいか、はっきり分かっている。 この力を使ったことがなくても…だ。 「いい妹を持ったな」 俺が呆けている舞希の頭上に手をかざすと、ほの白い暖かな光が掌から溢れ出すのを感じる。その光が舞希の全身を包み込むと、光り輝く体は飛翔を始め、白い発光体はプールへとゆっくり沈んでいく。 「申し開きは、しかと受け止めた。犯した罪は贖(あがな)うことかなわず。さりとて、やり直す機会をそなたに授けん。そなたの御霊を清めし、今ここに浄化を施す」 舞希が沈んでいったプール全体が眩い光を放ち、プールに張られていた水が一瞬にして干上がる。 蒸発した水蒸気とともに、光の中に溶けていく舞希の生まれ変わった魂が、再び母親の胎内に戻っていく。 「今度は…真っ当に生きるんだぞ」 俺は誰に告げるでもなく、安らかな魂を想い、目を閉じた。 まぶたの裏に映る女性が、優しく微笑みかけてくる姿が見える。 再びまぶたを上げると、学校中を覆っていた闇は晴れ、空は白み始めていた。
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