名もなき精霊

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放課後の部室棟のとある一角。 呼び出しておいてふてくされている少女を前に、俺は困惑していた。 「で………私はお前を認めてないが」 と相変わらず面倒臭い話し方をする一ノ瀬が、さらに面倒を起こすような事柄を告げてくる。 「暇だから、たまにはお前の奇特な人助けとやら…手伝ってやってもいいぞ。あくまで暇だから…ってなわけで誤解なきように」 一ノ瀬は前日の出来事の後、女子高で邪気にあてられた生徒達の意識を回復させ、“忘却術”を施すことに尽力してくれた。 俺1人の力だとあれだけの生徒の記憶を消すのは時間がかかるし、何より一ノ瀬の方が忘却術に長けているので、正直ありがたい。 「…てなわけで、私はこのまま京都に戻るぞ」 と何がしたくてここに来たのか?と俺が怪訝な表情を浮かべると、一ノ瀬は含み笑いを見せ始める。
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