第1章

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「お母さん、お父さん。僕を生んでくれてありがとう。向こうでもげんぎでやっでね。」 涙を流しながら強く言った。 しばらくして東京に住む母方の祖母から連絡がありすぐに葬式の準備を始めた。 生前、葬式は身内だけで楽しくやって欲しいなどと笑いながら言っていたのを鮮明に覚えていた僕は 両親の祖父母とひっそりと葬式を行った。 帰り際母方の祖母が言った。 「ひさちゃん。ウチにおいで。」 どうやら両祖父母で話し合って決めていたらしい。 16年暮らしたこの相田町を離れる事なんて考えた事もなかった。 「うん。ありがとうおばあちゃん。」 祖父母は各々実家に帰り、僕も家に帰った。 次の日学校で友人には説明もし、その日はすぐに早退をした。 家に帰り、夕方の午後5時頃から荷造りを始めた。 8割くらい進んだ時、家のチャイムが鳴った。 ドアの先には佳哉が立っていた。 ドアを開けるなり唐突に喋り出した。 「俺もお前も兄弟いないよな。だから兄弟ってこんな感じなのかなってずっと思ってた。明日から別々の場所だけど俺たちはずっと兄弟だからなっ!!」 涙を見せながら強く言った。 その日人生で初めて佳哉の涙を見た。 16年両親に劣らず隣にいた佳哉の言葉と涙に僕も素直に涙が出た。 「ありがと。 いつも僕の隣に居てくれてありがとう。 いつも楽しませてくれてありがとう。 いつもいつも…」 涙が止まらなくなった。 しばらくお互いの泣き声が響いた。 「たまには遊びに来いよ?弟なんだからさ」 笑いながら言ってきた佳哉の目に、涙は無かった。 「なんで佳哉が兄なんだよ」 笑いながら言った。 お互いに感謝の気持ちを伝えあった。 その日の夕御飯は熊谷家でお世話になった。 食べ終わり両親に挨拶をし、佳哉にもさよならをした。 帰ってすぐにベッドに入り気付いたら寝ていた。 翌朝、家に鳴り響くピンポーンと鳴る音で目が覚めた。 玄関に向かうと祖母がいた。 「用意したら行こうか」 僕はたくさんの感情、思いを込めて 「うん。」 と返事をした。 すぐに用意を済ました。 数少ない駅を使い、大都市行きの新幹線に乗った。 行きの新幹線で過去を振り返りながら祖母の実家、東京へと向かった。
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