雪乃 SIDE(1)

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「じゃっ! また連絡する。」 そう言って、男がアパートから出て行く。 「うん。またね。」 アタシは笑顔で手を振る。 バタン! 乱暴に閉められた扉の隙間から、かすかに朝日が射し込んだ。 鍵を閉め、さっきまで二人で過ごした部屋へと戻る。 六畳一間、1Kの狭いアパート。 玄関から八歩も歩けば、寝室もリビングもごちゃ混ぜなこの部屋に着く。 こんな短い距離なのに、もう、さっきの男の温もりはない。 火照った身体も熱は冷め、空っぽなアタシだけがここにいる。
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