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真っ暗な部屋の電気を付けると、中央に置かれた乱れた布団が目に飛びこむ。
それを三つ折りにたたむと、押し入れのドアを開け、定位置に戻した。
テレビを付け、テーブルに置いてあった飲みかけのペットボトルに口をつける。
画面に映るアナウンサーの滑舌のいい爽やかな話し方が、アタシとの温度差を感じさせた。
抱き合った男の名前は覚えていない。
名前なんてただの記号。
一瞬の温もりと、まやかしでも、アタシを必要だと感じさせてくれればそれでいい。
ゆっくりと立ち上がり、台所へ向かう。
給湯器のスイッチを入れると、裸体に羽織っていたロングカーディガンを床に脱ぎ捨て、ユニットバスのシャワーカーテンを開ける。
シャワーから勢いよく放たれる水が徐々にお湯へと変わり、アタシの冷えた身体を包んでいった。
ボディーソープで全身を綺麗に洗う。
その度に目に飛び込んでくる、お腹周りのアザ。
何年経っても消えてくれない、忌まわしい烙印。
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