雪乃 SIDE(1)

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相談できる人などいない。 友達なんかいるはずもない。 一度だけ、誰かの通報で、児童相談所の職員が訪問に来ただけで、それっきり。 変わらぬ日常。 両親の目を盗み、『助けて!』と書いて渡したSOSのメモは、どこかに捨てられたんだろうか。 それとも、面倒くさいと読んでももらえなかったんだろうか。 担任も見てみぬふり。 給食の時に箸が上手に使えず、泣きながら手づかみで食べた。 それ以降、あだ名は『イヌ』 寝る時も、布団で寝せてもらえず、毎日フローリングの床に直に寝ていた。 真冬の寒さが厳しい時だけ、使い古しのブランケットを一枚使う事を許可された。 暖房の効いた温かな寝室で、ふかふかのベッドに寝る両親と妹。 この家で、アタシだけがいらない存在だった。
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