望まない席替え

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蝉の声が青空に響くなか、私は、あるピンチを迎えていた…。 「はーい、今日は皆の大好きな席替えをするぞー」 先生のその一言で、クラスの皆が歓声をあげる。 …私を除いては。 「席替え!?私、この席気に入ってるのに…。」 私の席は、窓際の一番後ろの席。ここにいると、授業中寝ていても、何をしても怒られない。 だけど、今の私はこの席から離れてしまうかもしれないという大ピンチを迎えているのだ。 「…石!…白石!白石夏希!」 ぼーっとしてた私に声をかけてきたのは、先生だった。 「んー…何ですか、先生。」 「寝てないで、早くクジ引け!」 うぅ。いよいよ来てしまったか…。 私は仕方なくクジを引いた。 「夏希~、何番だった??」 と、私の肩を叩いたのは、このクラスで一番仲の良い友達、佐倉玲美だった。 「私は8番だったよ。玲美は?」 「私2番~!近くなれたら良いね!」 「うん」 先生が、黒板に座席表を書き、番号を書いていく。 …8番は、どこだろ? 席替えなんてしたくないけど、一応場所を探してみることに。 「あった!!夏希また一番後ろじゃん。良いな~」 私より先に玲美が見つけた。 「え、玲美近いじゃん。私の前だよ!」 「おぉ!!奇跡だ(笑)」 奇跡的に後ろになれて、テンションがあがり出す。 「じゃあ、移動しろー」 先生の指示でクラス全員が動き出す。机ごと移動するため、狭い教室が余計に狭苦しく見えた。 「ここかな?」 やっとのことで席にたどり着いた私は、最悪なことに気付いてしまった…。 「よっ、白石!」 隣の席になったのは、クラスでも目立つ存在の山口颯汰だったのだ。 「あ、どうも…。」 クラスの中心的な人と話すのはどうも苦手な私は、消え入りそうな声で返事をした。 「宜しくな!!」 「…こちらこそ」 私は、ひきつった笑顔でそう言った。 この日は、この話以外彼と話すことはなかった。
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