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第1章 再会
<長崎さん>
長崎さんと診療所の椅子でふたり。静かな時間が包んだ。日本を離れて…もうすぐ5年が経とうとしていた。
「ココにきて何年だ?」って長崎さんが静かに聞いた。「4年半……くらいです。元気そうで良かったです」と静かに返す私。「なな も」と、長崎さんがまた静かに返した。
「…日本に帰って来ないか?」長崎さんの言葉に、心臓が冷たくなった。…日本…。
帰りたくない…訳じゃない。でも…どうしたらいいか…。「…わかりません」私は正直に答えた。
ふっと、長崎さんが優しく微笑んで
「残念!!ななサンには帰らなきゃいけない理由が2つあります!!」なんて急に大きな声を出した。え??目を見開いて驚く私を尻目に、そのままのペースで続けた。
「ひとつは、俺の結婚式!!!
もぉひとつは、さっきドクターから日本での仕事を預かりました!!」??え??
えぇ~~~結婚??!!ホント??
「キャ~~~~~~おめでとうございます!!嬉しい!!わぁ~~~~凄い!!」
って立ち上がって叫ぶ私!あはははって優しく笑う長崎さん。そして「帰って来てくれるか?」って伺うように私を見つめるから。……断れる訳ないよ。だって。長崎さんは、私の家族だもん。長崎さんは私の…大切な…大切な……。「当たり前です!」って泣きながら答えた。
往診から帰ってきたドクターに、私からも話をして、日本でもココに繋がる仕事をすると約束した。あれから半年。帰国準備をバタバタして。新居は長崎さんに探してもらった。
5年振りの日本。私は、31歳になっていた。
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