熱帯植物街

翌朝、ぼくが学校へ行くと、ある話題で、クラス中がもちきりだった。
「聞いたか。あの話」
「ああ、聞いた。二組の北島がいなくなったんだってな」
「あとにはサイバーゴーグルだけが、落ちていたんだって」
「こえーっ！」
「まさに都市伝説だな」
ぼくが席に着くと、隣のいとちんが声をかけてきた。
「いま話題になってるよね。小中学生連続失踪事件」
「ああ。ニュースでみた。この学校でも、とうとう出たか」
「いったいどこへ行っちゃったんだろうね？ 北島くん」
「さあなあ」

学校から戻ると、ぼくは夕食をすませ、適当に宿題も済ませた。
いとちんとの約束の八時まで、まだ時間がある。
トロピカルプランツにログインするまでの間、サイバーゴーグルで、インターネットテレビをみることにした。
サイバーゴーグルをテレビモードに切り替えると、視界いっぱいにテレビ画面が映しだされる。
テレビでやっていたのは、ニュースだった。
「では次のトピック。小中学生連続失踪事件のニュースです。失踪者は、とうとう百名を超えました。失踪した小中学生は、いずれもサイバネティクス社のサイバースペースゲーム、タウンオブトロピカルプランツに熱中していたことがわかっており、警視庁は一連の事件との関連を調べています」
そういえば、いなくなった北島も、トロピカルプランツに相当ハマっていたっけ。
だけど本当に、いなくなったヤツらは、どこに消えてしまったんだろう？
そんなことを考えているうちに、約束の八時がきた。
ぼくは、サイバーゴーグルのモードを切り替えて、トロピカルプランツにログインした。