熱帯植物街

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四組の矢萩がやられた。 このニュースは、さざ波のように、学校中にひろまっていった。 「今度もまた、サイバーゴーグルだけが、部屋に落ちてたんだって」 「こえーっ」 「やられるのは、トロピカルプランツで最終ステージまで行ったヤツらしいぜ」 「いったい何が起こるんだよ。最終ステージで」 最終ステージで何が起こるのか、サイバネティクス社は、明らかにしていない。 そのとき、教室のスピーカーから、アナウンスが流れた。 「十時から校長先生の大切なお話があります。生徒の皆さんは時間になりましたら、校庭に集合してください」 「大切な話って何かな?」 ほくといとちんは、顔を見合わせた。 「始まったわ」 フローラが言った。 「覚悟しておいた方がいいわよ」 ぼくらが校庭に整列すると、近藤校長は話し始めた。 「小中学生連続失踪事件のことは、皆さんもテレビのニュースなどで、聞いているかもしれません。本校でも大切な生徒が、行方不明になっています!」 近藤校長は、悲痛な声をはりあげた。 「いま、巷では、トロピカルプランツなどという、実にくだらないゲームが流行っています。そして、小中学生連続失踪の原因が、トロピカルプランツにあるのではないか、ということを、たくさんの人が指摘しています。トロピカルプランツは、サイバードラッグのようなものなのです!」 近藤校長の声は、一段と高くなった。生徒たちがざわつき始めた。 「私はそんな危険なゲームを、そのまま放っておく訳にはいきません! 皆さんは、両親や先生の言うことを良くきいて、トロピカルプランツをしてはいけません! 本校ではトロピカルプランツは禁止します!」 動揺と驚きが、生徒たちの間にひろがっていった。
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