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「どうする?」
ぼくといとちんは、公園で考えこんでいた。
目の前には、サイバーゴーグルが二つ。
「隠すんだ…隠すんだよ! このままじゃ、どうせゴーグルは、親に取り上げられちまう!」
いとちんは言った。
「どこに隠すんだよ? それに隠しちゃったら、プレイができないじゃんか!」
「仕方ない。ほとぼりが覚めるのを待つんだよ」
そのとき、ぼくらの後ろから声がした。
「おまえらぁ」
振り返ると、同じクラスの矢島が立っていた。
「そんな危険なもの。まだ持っていたのかぁ」
「別にぼくらの勝手じゃないか」
いとちんが、矢島に言い返した。
「トロピカル?プランツは、サイバードラッグなんだろ」
「違うよ!」
「俺によこせよ!」
「やだ!」
「大人たちが言ってたぞ。おまえたちは現実から逃避してるってな!」
矢島は、いとちんの前に、ずかずかと歩み寄った。
「こんなもの、こうしてやる!」
矢島が、いとちんから、サイバーゴーグルを奪い取って、地面にたたきつけた。
「ああっ!」
いとちんのサイバーゴーグルは、粉々に砕けちった。
いとちんは、一瞬ぽかんと口を開け、それから大声で泣き出した。
その夜。うちに一本の電話が、かかってきた。
電話に出たのは、うちの母親だった。
「いえ…はい。うちにはいらしてませんけど…」
母親はしばらく話していたが、やがてぼくに受話器を手渡した。
「あなたに、ちょっとかわってほしいって言ってるのよ」
ぼくは、受話器を耳に当てた。
「うちの子が、どこへ行ったか、心当たりはないでしょうか!」
受話器の向こうから、いとちんの母親の悲鳴にも似た声が聞こえてきた。
「外へ出たまま、まだうちに戻らないんです!」
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