第1章

12/22
前へ
/22ページ
次へ
知らない街で道に迷って、ハッとこんな景色に出くわしたら一生忘れられない様な気がします。昔から大好きな景色です。新潟市西区の新川漁港に程近い、渚橋と言う橋の上で、風も日差しも強い日でしたが気持ちよく吹いて来ました。 川の両岸に白や青の小型船舶が係留されています。上流に向けてどこまでも並んでいます。揺れる度にかすかに、キイイ、キイイと鳴き声の様に船達が何か言っています。 風は海から吹いていました。僕は風に背を向けて、どこまでも続く船の行列に懇願する様に吹きます。 この中のたった一隻でいいから、誰かヒゲの船長が乗っていて、あんたハーモニカうまいねえ、乗りなよ。え?いいんすか、いや…あ、そうすか、じゃあお邪魔して… となって、ポンポンポンポン…って風を受けて船は新川を上ります。アオサギに手を振りながら僕はハーモニカを吹き、船はUターンします。そのまま日本海、佐渡沖に出てカムチャツカ半島を左手に見ながらベーリング海峡を潜り抜け、ニューヨークのハドソン川にかかるベラザノ橋に挨拶して お、今なんか魚が跳ねた。ボチョンって。イルカかも知れない。 Dolphin Dance また跳ねた。ニューヨークかあ、行ってみてーなーなんてちょっと思ったけど、渚橋の上から見る景色もそれはそれでいいもんです。 残念ながらヒゲの船長が顔を出すことはなく、主を待つ船達は相変わらずキイイ、キイイとひそひそ話しをしています。この景色は立派な景勝地だよなあ、世界遺産にしちゃえばいいのになんて一瞬思ったんですが、帰り際に「船舶の係留を禁止します」って言う立て看板があちこちにありまして、なるほどこれは非合法な光景らしいですね。 となると余計に哀しく、美しい。ああ、船に乗りたい。 また明日。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加