第1章

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水の音が好きです。雨がアスファルトを叩く音。川のせせらぎ。流れ落ちる滝。水道の蛇口から滴る水滴。 五泉市大字太田1094の1 とそこに書いてあります。これが一体なんなのかさっぱり分かりません。赤い鉄の枠でTの形に仕切られています。土手の上にベランダの様に、あるいはステージの花道の様に、コンクリートの舞台が早出川に向かって用意されています。その舞台の中心にはなんか棒が立っています。なんか測るんでしょうがなんでしょう。分からん尽くしでごめんなさい。下から絶えず水の流れる音が聞こえてきます。僕は赤い鉄の枠を軽やかに越えて分からん棒の横で赤い鉄の枠に座り、演奏します。 明日に架ける橋 土手の上にいますので、枠から落ちると怪我をすると思います。下はコンクリートの用水路みたいになっています。 だんだん暗くなってきました。するとその赤い鉄の枠に、ヒョコ…ヒョコ…っと何かが乗っています。枠を伝ってこっちに来ます。アマガエルです。なんだよ、人が吹いてんのに。だんだん近づいて来ます。なんだよ。もう。ちょっと。と思い、僕は枠から降りて道を譲ります。 さっきまでこっちに向かってきたカエルが止まっています。そこから落ちると怪我をすると、わかっているのか、じっと止まって動きません。この音は、彼に捧げます。 飛んだ。 と、思ったら、赤い鉄の枠の裏にいました。そそくさと、上に上がって来ます。ビックリしただろうとでも言いたげに、さっきと同じ格好でそこにいます。 若干、赤くなっているみたいです。さっきより色が濃くなっています。あー死ぬとこだった。と言う焦りを精いっぱい隠しながらそこにへばりついています。五泉にも、ど根性ガエルがいました。 また明日。
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