第1章

19/22
前へ
/22ページ
次へ
新潟島が船だったらいいのになあと思います。ニューヨークを後にした大西洋上の新潟島の乗組員の間で何か揉めているようです。フロリダ半島が見えてきました。 新潟島はパナマ運河を通り抜けられるか?全長5km、全幅2kmのアゲハチョウのサナギの様なこの島の行く末を誰もが案じています。旧栄中学校裏手の公園の一角です。集まっている島の人々を掻き分けて僕は議論の場に出ます。川幅が最大で200mほどのパナマ運河をこの島が通り抜けられる筈はありません。南米と南極の間を行くべきだと言う意見が優勢な中、僕は叫びます。 「新潟島が飛べばいい」 新潟市中央区、横七番町通が大好きです。以前とだいぶ変わってしまったけれど、恐らくここを曲がると、とかすかに残る薬屋の面影を頼りに左に曲がると記憶のままの栄中学校の洋館のような佇まいが見えます。その向こうに小さな公園があって、そのまた向こうには寄居浜が広がっているはずです。 昔とちっとも変わらないレンガ造りの東屋があり、僕らは確かにここでギターを弾いた。昔はこんなに雑草は生えてなかった。もっと浮世離れした別世界のようだった。あれから20年が経ち、こうして僕はハーモニカを吹いています。 Over the Rainbow そうだ。吹きながら浜まで歩いてみよう。重たい雨雲が佐渡の島影に覆いかぶさっています。雨がここから見えます。ところどころに夕焼け雲が見えたと思えばその間に青空が残っています。風が強く、波が荒々しくなってきました。 新潟島が船だったらいいのになあと思います。 また明日。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加