第1章

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新潟島が船だったらいいのになあと思います。 以前はやすらぎ堤と呼ばれていたけれど今は海岸になってしまいました。信濃川が横たわり、その向こうにも同じような芝生の堤防が広がって、そのまた向こう側には上所や出来島の町があり、真正面にはきっとオートバックスのオレンジ色の看板が見えていたはずです。右側に県庁があり、その奥には角田山、弥彦山が見えます。左側には越後線の鉄橋が走り、新潟駅を中心に繁華街がありました。あるいはビッグスワン。朱鷺メッセ。メディアシップ。 そんな懐かしい景色を置き去りにして、僕らは新潟島と言う船で旅に出た。目の前には美しいカリブ海が諦めたかのように僕らを受け入れてくれています。 日替わりで地元ミュージシャンがみなとタワーに立ち、意志を伝えるように演奏します。噂では演奏が不味いと新潟島が沈むと言われています。上手い演奏だと風が吹きます。島がスピードを上げるのでしょう。今夜、僕の番が回ってきます。カリブ海の島々を潜り抜けて、パナマ運河を目指します。ドキドキします。失敗は許されない。 だけど、そんな時ほど、思ったように、吹きたいように吹けばいい。吸えばいい 。その時、成功や失敗などと言う概念ははるか遠くに置き去りに出来る。演奏に込めるメッセージはたった一つ。 新潟島よ、飛べ! そんな思いを込めて今朝ほど、白山駅に近い側のやすらぎ亭で演奏してきました。振り返ると大きなマンションのベランダで洗濯物を干したり布団を干したり忙しそうにしています。目の前には呑気なクルーザーが数隻たゆたっていました。 Old Folks ちょっと失敗しました。新潟島が船だったらいいのになあと思います。 また明日。
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