第1章

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群馬はいい。中でも高崎は特にいい。憧れの地、高崎駅の西口の2階の改札から出た辺りでハーモニカを吹いています。目の前の大きな時計は22時を指しています。次から次から、人が溢れてきます。みんな楽しそうです。 遠巻きに聴いている人がいます。あっちにも、ほらこっちも。友達と話をしながらちゃあんと聴いているんだ。かわい子ちゃんとブサイクちゃんが入り乱れて僕を取り囲んでワーキャー言うとか、駆け寄ってきて握手してくださいとか、言葉を失ってほろほろ泣き崩れるとか、千円札を2,3枚僕の胸ポケットに押し込むとか、そういう出来事は一切ありませんでした。でも、とっても気持ちよく吹けました。風が気持ちいい。乾いた風にかき消されて最後の声も聞こえません。 風になりたい やりたい事とやらなきゃいけない事が毎日押し寄せてきます。上手くやりくりしたいけど、難しいもんですね。 だから僕は知らない街でハーモニカを吹くと言う方法を見つけた。これが実に効く。全てをあっち側に放り投げて、僕とハーモニカだけで、どこまでも無責任に吹く。誰がどう思おうが知ったこっちゃない。面倒臭い時代に生きているんだ。どこかでバランスをとらないとおかしな事になっちまうぜ。あんたら大丈夫かい?ってな事を思いながら。 目の前の大きな時計は23時半を指しています。まだまだ人はやってきます。人生にはこういう楽しみ方もあります。 水害がありました。被害が大きかった地域の方にはお見舞いを申し上げます。 また明日。 第1章 おわり
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