第1章

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新潟島が船だったらいいのになあと思います。佐渡沖を北上してカムチャツカ半島を左手に見ながらベーリング海峡を潜り抜けて一路ニューヨークを目指す旅に出ます。新潟ジャズストリートの真っ最中にこっそり船出します。ジャズミュージシャンとジャズファンの密度が高い住民構成のまま、世界一大きな船として世界中をびっくりさせます。僕は一人、新潟島の先端に立ちハーモニカを吹くという重大な任務を遂行しているでしょう。 さて、今日はその新潟島の先端。閉店したばかりの入船うどんに来ました。奥さんがいらっしゃったのでご挨拶して、まずは旦那さんが元気な事を伺い安心しました。佐渡で何やらおっぱじめるらしいですが楽しみです。 入船うどんの近くにみなとタワーと言う建物がありますが今まで全くノーマークでしたので今日はこちらに潜入して演奏したいと思います。「我は海の子」を吹きながら足取りも軽く、台風15号のそよ風に誘惑されるままに階段を登ります。曹操が許都に築いた銅雀殿の様な急勾配の階段は登る者に何か覚悟を要求するかの様です。 海が見えます。 昨日の雪椿は譜面を読むと言う課題を自分に課した格好になりましたが、今日は逆に、思い付いた曲をどれだけ正しく、美しく再現出来るかに挑戦しました。 鼻歌がふっと出る様に、演奏出来るようにもなりたいのです。 誰もいない海 真っ赤な灯台が灯りを点け始めました。その向こうには佐渡からやって来たフェリーが見えます。演奏はと言えば、E♭でならなんとかなるかならないかと言うくらいです。けれども、この飾り気のない日本海の美しさの前では多少ゲツバタした演奏の方が似つかわしい。 新潟島が船だったらなあと思いながら吹きました。 また明日。
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