第1章

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どこかで花火が上がる音が聞こえたので、ブックオフ十日町店の「ごくせん」の立ち読みを3巻の途中で切り上げて打ち上がる花火を見上げながら一人、ハーモニカを吹けるちょうどいい場所を探しながら車を走らせていました。今夜は十日町の祭りの日でした。雨足は無情にも次第に強くなっていきます。それでも花火師の勢いは止まらない。もうここがどこだか分からないようになりながら坂を登り、見知らぬ駐車場の一角にある、見知らぬ軒下に立っていました。 どうやら50メートルも歩けばその田んぼの真ん中に勢いが止まらない花火師連中がいます。 あの夏の花火 花火の音はその煌めきの0,5秒後くらいに大音量で辺りに響き渡ります。勢いのある花火師連中に僕の音は届いたでしょうか。多分それどころじゃないと思います。 気がつけば雨は上がり、子供神輿が近づいて来ました。30分くらい吹いたでしょうか。僕はハーモニカを片付けました。 音は出すべきところと出してはいけないところがあります。ここは出すべきではない。 そのセンスをもっともっと、研ぎ澄ましたい。出してもいい局面で出さないで、出してはいけないところで出したり、今までの僕は恥知らずで臆病だった。こうして研ぎ澄ました音は、いつかどこかのステージであなたに届くと信じています。 また明日。
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