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ヴァルは盛大にため息をついて、帽子を脱いだ。
顕になった黒髪と金眼が女をじっと捉える。
「こんなガキにビビんなくたっていいんだよ。ホラ、アンタとお揃いの黒髪だ。安心したか?」
ヴァルは自分の頭を指差しながらニィッと笑いかける。
黒髪は一緒でも、金色の瞳と口元から覗く長い犬歯は充分、警戒に値するのだが、女はヴァルに対する警戒を少し弛めた。
女にとっては顔を晒すことと、ヴァルが自分を安心させようとして行動したことが大きかったのだが、ヴァルは知る由もない。
「誰にも話したこと、ないんで、うまく話せないかもしれないけど、聞いてくれますか?」
女は胸の前で指を組んだり外したりしながら言う。
「いいぜ。どうせしばらく出られないしな」
快活に笑うヴァルに、女の緊張も解けたようだ。ゆっくりと口を開いた。
「私、いじめられてたんです」
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