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マルド王国王都レーデン。
そこにひとりの幼い少年がいた。
彼は城から延びる大通りに立ち、興味深げにきょろきょろと辺りを見渡す。
大通りには立派な建物が軒を連ね、行き交う人々の着ている洋服もランクが高いのが窺える。
大通りから脇に逸れると、屋台や露店商がところ狭しと店を開き、こちらは労働者や冒険者らしい身なりの人で溢れていた。
大きな街にはつきものであるが、街の外側へ向かう程、治安が悪くなりひったくりなどが横行する。レーデンも例に漏れず、路地裏には胡乱な目付きをした人間が多くいた。
少年はそんな視線をものともせず、路地裏に足を踏み入れようとする。
すると、背後から声がかかった。
「ちょっとぼく、この先は危ないから行っちゃダメだよ」
少年は声をかけてきた人物を振り返る。
そこには冒険者らしい格好だが、その実、比較にならない程に贅を尽くした装備に身を包んだ男が立っていた。
勇者だ。
少年は直感した。
この国で召喚された勇者がいるのは少年も知っていたが、なんのアクションもなしに出会えるとは。
少年にとって暁倖という他ない。
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