ヴァルフリート

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「…え?ちょっ、悪いなんか妙な言葉が聞こえたけど、気のせいだよな?」 マルコは眉をひそめる。 「お前図体でかくなって耳悪くなったの?」 「なってねぇわ!」 「じゃあ聞こえた通りだ」 うむ、と頷いて見せるマルコ。失礼極まりない。ただ「聞き間違いではない」と言うだけでは駄目なのだろうか。 「いや、お前…還りたくないのか?」 困ったように尋ねるヴァルにマルコは唸る。 「うーん、別に帰りたくないってわけでもないんだが…こっちに居た方が面白そうだしな!それに俺、結構役に立つと思うんだよね!ほら、勇者だし戦力になるし?」 ね?と笑うマルコにヴァルは戸惑いを隠せない。帰りたくないとごねる奴は初めてではないが、ここは魔王城で、すぐ後ろにハロルドがいる。彼は人間が嫌いなはずであるのに、マルコの滞在を許している、むしろ迎合しているような態度がヴァルには理解出来ない。 ちらりと様子を窺う視線が、ハロルドと絡んだ。視線の意味を察してかハロルドが口を開く。 「レーヌ様から聞き及んでおりますが、ヴァル様を命がけで守って下さったのはマルコ様です。私がその恩義に報いるのは当然です」 「…それだけか?」 「仰る意味がわかりませんな」 (狸ジジイめ) ヴァルは心の中で毒づく。口には出さない、ヴァルにとっても我が身は可愛いものであるからだ。
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