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乾いた土の上を一陣の風が吹き抜ける。
魔王城のかつて庭であった場所は手入れをされなくなって久しく、不毛の大地さながら雑草さえも見当たらない。
そこに2人の少年が佇んでいた。
ひとりが剣を構えて言う。
「本気で行っていいんだな?」
もうひとりの少年がその言葉を鼻で笑った。
「当然だ」
少年の周りを覆う空気が変わる。そこには濃密な魔力が漂いはじめていた。
剣を持った少年が地面を蹴る。
一瞬で間合いを詰め、横薙ぎに振るった刀身は、少年の身体に触れる前に力をなくし、あっさりと捉えられた。
一度大きく距離を取り、今度は斬撃を飛ばす。
ところがこちらも、少年の身体に触れる前に消え去った。彼はまだ一歩も動いていない。
(どうなってる?)
剣を握る手にじわっと汗が滲み、雑に拭って握り直した。
『身体強化』を使って、初撃よりもスピードを上げて突進する。
少年まで2mといったところで、地面を強く蹴って一瞬にして背後をとった。
(入った!)
少年は確信を持って剣を降り下ろす。
だが、手応えを感じることは出来ず、全力を持って降り下ろした刀身は少年の手に静かに触れているだけであった。
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