ヴァルフリート

10/12

137人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
「俺の勝ちぃ」 マルコは木剣を拾ってニヤニヤと笑っている。 最後の攻撃の直前、マルコは木剣自体をフェイントとして利用し、ヴァルの背後を取ったのである。 「くっそぉ…お前ら余計なこと吹き込むなよな」 近付いてきた側近を睨むが、お構い無しに反論してくる。 「お主が動こうとせぬからじゃろうが。しかし身体に問題はないようじゃの」 問題なかった腰が大惨事である。 「魔力の流れにも不自然なところはありませんね」 だから腰が…。 ヴァルは何も言わずに自分で治癒を施した。 これも身体が成長し、魔力が増えたことで使えるようになった魔法である。 チビの身体では《送還》と《レジスト》しか使えなかった。 《レジスト》は運動エネルギー自体を消し去るのでヴァルの意識が及ぶ範囲の攻撃は、触れることで静止する。 だが魔王の動体視力をもってしても追い付けない攻撃には《レジスト》は効果がない。 転生して5年間、ヴァルには実戦経験が全くと言っていい程に無かったのだから、攻撃の予測が出来ない。フェイントにも反応してしまう。 そこが『複写』を持つマルコに勝てない原因である。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

137人が本棚に入れています
本棚に追加