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「ヴァル様!」
大通りへと向かう道すがら、大男が血相を変えてヴァルの元へと駆け寄ってきた。
「おぉ、ハロルド。偶然勇者に会ったから送還してきた」
ちょっと昔の友達に会った、と言っていてもおかしくない程軽い口調にハロルドの目が眩む。
「独りでふらふらしないで下さい。用事が済んだなら早く帰りましょう。人間臭くて堪りません」
ハロルドが顔をしかめる。本当に辛いのかもしれない。
「王都にいるのはひとりみたいだしな。早いとこ帰って昼にしよう、俺も疲れた」
本当はもうひとりくらい送還できる魔力はあるのだが、ハロルドに無理をさせたくない手前、そう言う。
城門を抜け、近くの森に入り、幻術で隠してある魔方陣に足を乗せれば一瞬で石造りの建物の一室に移動した。
魔王が居を構える城。
魔王城である。
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