ヴァルフリート

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「もう一度だ」 マルコが構えをとる。その姿は決して能力だけに頼ったものではない。 マルコの気迫に圧されないよう、ヴァルもまた静かに魔力を身体に纏わせた。 争いが好きではないヴァルだが、強くならねばならない理由があった。 話は少し前に遡る。 * 「なんだこりゃあ?」 自らの手配書を手にマルコが素頓狂な声をあげる。 蒼のダンジョンのフロストドラゴンが持ってきた情報だ。レーヌが新しく作り直したダンジョンボスは魔王軍の新たな配下として、マルコ達を追ってきたジストア帝国近衛師団を全滅させた。 問題はその後である。 ヴァルが3人を送還しマルコが魔王城に身を寄せていることなど、近衛師団という連絡役が居なくなったことで帝国には伝わるはずもない。 調査のため追加派遣された兵たちが見たのは、勇者がいた痕跡のある28階層、ダンジョンボスのドラゴン、そしてドラゴンの傍らに転がる近衛師団の鎧兜だった。 そもそも帝国はマルコ達を「反逆者」と言って襲ってきた。そこにどんな行き違いがあったのか、今の魔王軍には知る由もないが、嵌められたのだろうと察しはつく。 そこに討伐に向かった兵の全滅の報せ。マルコ達勇者に懸賞金がつくのも頷ける話である。 蒼のダンジョンには今、自称腕に自信のある冒険者が大勢来ているらしい。自称の彼らは情報源の餌になったのだろう。
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