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不幸中の幸いと言うべきか、3人の勇者は既に帰還している。マルコにも切々と還るように促していたヴァルだが、最近は説得することを諦めた。何を言っても「でも俺帰る気ねぇし?」としか返って来ないからだ。
しかし懸賞金がかかっているとなると、出歩くこともままならない。ならばどうするか?
「帝国攻めとは腕が鳴るのぅ」
滅多な事を言うもんではない。ヴァルは即座に棄却したが、如何せん他の連中が乗り気だった。
「ついでですから、城の魔法陣も破壊してしまえば大義にもなりましょう」
大義がついでなのはこの際置いておく。散々ごねたが、風向きが変わることは一切なく、攻城戦の準備が滞りなく進んでいく。
このままでは死にかねない。ヴァルもまた腹を決めた。
必要に迫られての戦闘訓練である。
正直やる気はない。
やけに張り切る部下と賞金首となった勇者の暴走に巻き込まれただけだ。
(これでいいのか魔王軍)
恣意的としか言い様のない魔王軍は、ヴァルの意見など一向に介さぬまま出撃の日取りを決めた。
「ヴァル様、明日は怪我しないで帰って来て下さいねー?」
ヴァルの身を案じてくれるリアンに涙腺が決壊しそうになる。
「魔王様の身体に傷つけたら承知しませんからー」
そう言って笑顔を見せるリアンにヴァルの涙も引っ込んだ。
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