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―ヴァルside―
「ふぁぁぁぁー…あーねむっ」
誰も居なくなったことで気が抜けたのか、大あくびが出た。
遥か頭上の穴からはうっすらと悲鳴と思われる声が響いてくる。
ハロルドを見た人の悲鳴だろうか?あれ俺もマジでビビったからな。チビるかと思ったからな。
レーヌが各階の足止めを担当するとは言え、あまり悠長にしているわけにもいかない。
俺は目的地を頭の中で描く。ヒロノブから聞いた話をマルコから聞いたから正確性には欠けるかもしれないが、大体でも方向が分かるのは有難い。
放棄された地下洞窟から土砂と壁で寸断された向こう側に、城の転移魔法陣があるはず。とりあえず道をつくらねば話にならない。
俺は壁に手を当てて、詠唱を試みる。
「あー…ンンッ!えーと、《土よ、我が声に従い穿て、ロックニードル!》」
…あれっ、ナニモオコラナイヨ?
ひやっとした壁の感触が手に伝わるだけで、穴が空くどころか、なんの変化もない。
うっそ、結構詠唱恥ずかしかったのに!?
オーケー落ち着け俺。
きっと間違えたんだ、うん。恥ずかしがったら駄目とかそんな謎ルールがあるのかもしれない。いや、ないな。
「フンスッ!」
強引に魔力を流し込んで岩壁を破壊する。見事にボゴォッと穴が空いた。
俺には詠唱が必要ないらしいんだけど、MPコントロールに良いかと思ってやってみたんだが、見事に外した。
いや、そもそもざっくり「魔力」としか表現しないし、数値化もされないから期待はしてなかった。
…してなかった!
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