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城の地下に踏み込んで、ぎくりとした。
この地下空間は広くはあるが、部屋数が数える程しかなく、扉というか間仕切りも見当たらなかった。
だから隣にある空間に積まれた何かが目に飛び込んできた。
床には直径5mはあろうかという淡い青の光を放つ魔法陣。転移魔法陣だ。
その上に積まれた、動かない人らしき小山。魔法陣からは幾筋も赤い液体が道をつくっていた。
「な…んだ、これ」
転移魔法は魔法陣に組み込まれた特殊な魔力に、膨大な魔力を注ぐことで発動する。それは国お抱えの魔術師が複数人、魔力を注ぎ続けてやっと発動出来るくらいの代物だ。
だが、どんなものにも裏技ってやつは存在する。魔力の代わりに生命エネルギーを注ぎ込んでも、発動は可能だ。
生命エネルギーとはその名の通り、生きる力。魔法陣に注ぐためには、陣の上で命を絶つ必要がある。
よく見ると、積まれた人には動物の耳が生えていたり、尻尾が生えていたりした。
この国で立場の弱い亜人を使い、転移に必要な魔力を補おうとしたってところだろう。
「うっ…え」
凄惨な光景に胃液がせり上がる。忌々しいことに魔族の身体はむせかえるような血の匂いを、芳醇な香りとして認識している。
だが俺の心は人間だ。
どんなにいい匂いに感じても、気分は悪いし脂汗が止まらない。
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