ヘイデン制圧戦

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なんとか空気を飲み込んで、重い足を進める。 たかだか10mくらいの距離だったのに、遅々として進まなかった。 血溜まりを避けて爪先が魔法陣に触れる頃には、汗でびっしょりになって肩で呼吸をしていた。 あぁ、リアンが張り切って用意したローブが台無しだ。 俺はその場に跪き、光を放つ魔法陣に触れる。 そこから魔力を注ぎ、鍵となる魔力だけを抜き取る。 こんなことが出来るのは、魔法陣に残る魔力がヴァルフリートの魔力だからだ。 残るのは空になって光を失った魔法陣。もういくら注ぎ込んでも転移魔法が発動することはない。 俺は立ち上がり、魔法陣に向けて炎を放つ。亜人たちの身体がどんどん飲まれていく。 恐らく、亜人たちは自分の意思で命を捧げた訳ではないだろう。積み上げられた亜人は殆どが服を着ていなかったし、手錠をかけられた遺体もあった。 この国が、亜人を生け贄に捧げたんだ。 俺の役割はここまでで、後は3人が引き揚げてくるのを待つだけだった。 けど、このまま帰るなんて出来ない。年端もいかない亜人の頬には涙の跡がくっきりとついていた。 痛かったはずだ。 泣き叫んだはずだ。 赦しを乞うたはずだ。 命じたのが誰にしろ、実行したのが誰にしろ、このまま看過することは出来ない。 俺は地上へと続く階段へ、足を向けた。
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