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「ヴァ…お主、その姿はなんじゃ!?」
レーヌが俺を見て、正確には膝から下が血に染まったローブを見て悲鳴じみた声をあげる。元からキンキンと甲高い声だからもう耳に痛い。
ヴァルフリートという名はベテラン兵士ならすぐに魔王の名だと分かるだろうから、城の中では呼ばないよう事前に話していた。
「大丈夫、俺の血じゃない」
「しかし…」
俺の血じゃないとしても、足元はフラッフラだし顔色も悪いと思うから心配するなって方が難しいだろう。
それでも俺は歩を進める。
地下から続いた階段を上がった先には、すぐ近くに上へと伸びる階段があった。迷う心配のない構造で有難い。
ふらつく身体で手摺に寄りかかり、階段を登り始めると、後ろからガシャガシャと耳障りな音が響いてきた。
城の兵士たちが足元を氷漬けにされ、そこから脱しようともがいている。
レーヌの氷は特別製だ。対象の生命エネルギーを吸い上げて成長する。つまり、もがけばもがく程、氷漬けにされるって寸法だ。
音を立てていた兵士を見ていると、膝までだった氷が腿まで飲み込んだ。もう下半身を諦めるしか脱する方法はないだろう。
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