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兵士たちが何か喚いているが俺の耳にはただの雑音にしか聞こえない。
レーヌも何か言いたげだが道を空けてくれた。いつもは余計なことまで言うのに、気を遣わせてしまったようだ。
階段を上がると、各階にレーヌ謹製の氷像が溢れていた。その内の一体が俺に喚く。
「止まれ!それより上に行くことは許さん!お前は何だ?魔族の仲間か?」
帽子で耳と目元を隠した俺は、一見すると人間にしか見えない。しかし阿呆みたいな質問だな、城の兵士が身動きとれない事態で自由に動ける俺が人間に見えるのか?
「あんま喚かない方がいいぜオッサン。死にたくないだろ?」
オッサンに纏わりつく氷は既に胸まで達している。口まで覆われたら後は時間の問題だ。
しかし俺の忠告を無視してオッサンは喚き続ける。
「黙れ賊が!ジストア帝国は決して貴様らを許さん!追い詰めて、苦しめて…」
「泣き叫んでも殺すんだろ?」
オッサンの言葉を遮る。
「エネルギーにされた亜人みたいに」
途端、オッサンの顔色が変わった。俺たちに対する怒りで頭に昇っていた血の気が一気に引いたようだ。
「馬鹿なことしてくれたもんだぜ、ほんと。勇者を反逆者に仕立て上げて、また新たに召喚?なぁ反逆ってなに?この国で何が起こってんの?」
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