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カイザル皇帝の長子、ブダル。
なんというか、非常にわかりやすく駄目なご子息様だった。
まず、ベラベラと喋りすぎだ。むっちりとした唇から唾を飛ばしながら、自分が如何に正当な行いをしたかを俺たちに熱弁している。
「皇帝を誘拐した勇者が、なんで蒼のダンジョンにいるかとか思わなかったのか?」
オッサン―本当に近衛師団だった―に聞いた時から疑問だったのだが、誘拐した犯人が事前に目的地として伝えていた場所になんか行くわけがない。
「あー無駄無駄。こいつ俺が3回説明してようやく「あれっ?」みたいな顔しやがったから」
「そうか…」
マルコの若干疲れた声色に俺の肩もまたがっくりと下がる。
大丈夫なのか?帝国。
近衛師団の襲撃と、地下の惨状はブダルの命によるものだった。それに反対した宰相以下国の重鎮たちはここより上の階に纏めて監禁されているようだ。
解放にはハロルドが向かったらしい。
ふと、ブダルが何かぶつぶつと呟いていた。しきりに喋っていたから気付くのが遅れてしまった。詠唱している。
「《ファイアーボー》…ガフッ!」
慌ててブダルの口を塞ぐ。うわぁ脂が凄い。
てかファイアーボールかよ!驚かせやがって!塞ぐまでもなかったわ!!
レジストせずに塞いだせいで、構築された魔法は口の中で爆ぜたようだ。ブダルは声にならない声を上げてのたうち回る。
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