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ざわつく老人たちを手で制し、宰相が頷いた。
「条件を飲みましょう。殿下の処遇についてはこちらに一任させて頂けますな?」
「無論だ」
ブダルが小さく悲鳴を漏らすが、知ったことではない。
「レーヌ!引き上げるぞ!」
下に向かって叫ぶ。階段フロアは繋がってるから充分に聞こえるはずだ。
兵士たちを覆っていた氷が砕け散り、俺たちもまた転送で地下へと飛び、そのまま魔王城への魔法陣に飛び乗った。
「つっかれた…」
石造りの見慣れた部屋に着くなり、膝から崩れ落ちる。
他の連中も同様に疲れているようだが、楽しそうでもあった。
遊園地でアトラクションに乗った後、興奮したまま「もっかい乗ろう!」と言い出すあの感じだ。
そんな空気の中、ハロルドの背中から小さな影が覗いた。
そこには、俺と背丈があまり変わらない亜人がいた。
「あ、あの…」
亜人はハロルドのシャツを掴んだまま、おどおどと視線を泳がせている。
「ハロルド?」
俺が問いかけるとハロルドはひとつ咳払いをして、言った。
「拾いました」
「元の場所に捨ててらっしゃい!!」
俺の叫びは魔王城に虚しく響き渡った。
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