小さな王

9/10
前へ
/167ページ
次へ
よし、とヴァルは書面を指で弾く。 「当面の対処として俺が行こう」 「なりません」 「駄目ですー」 ハロルドとリアンの声が重なる。 ヴァルとしては「当面」と言ったのだから、そんな当然のように反対されるとは思っていなかった。 「えっなんで?俺が行くのが一番確実だし手っ取り早いでしょ?」 自分が正しいと思い込んでいる主人に、ハロルドは深いため息を零す。 「いいですかヴァルフリート様。我々は確かに魔王軍とは名ばかりの脆弱な組織です。これは覆りません」 「お、おう?いや、そんなことないんじゃない?」 卑下するようなハロルドの言い方に異を唱えるが、目だけで黙らされる。 (俺、主人だよな?) 「それも全て、勇者の量産によるものです。勇者は加護の力もあり、人ならざる力を持つため、我々魔族が倒そうとすれば、多数の犠牲が出るでしょう」 だからこそ、と言ってハロルドはヴァルの肩をがっしと掴む。 「我々には魔王様が必要なのです。ダンジョンに自らが赴くなど、笑止!魔王様に万が一、何かがあっては我らは滅びの道を進む他ありません」
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

137人が本棚に入れています
本棚に追加