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よし、とヴァルは書面を指で弾く。
「当面の対処として俺が行こう」
「なりません」
「駄目ですー」
ハロルドとリアンの声が重なる。
ヴァルとしては「当面」と言ったのだから、そんな当然のように反対されるとは思っていなかった。
「えっなんで?俺が行くのが一番確実だし手っ取り早いでしょ?」
自分が正しいと思い込んでいる主人に、ハロルドは深いため息を零す。
「いいですかヴァルフリート様。我々は確かに魔王軍とは名ばかりの脆弱な組織です。これは覆りません」
「お、おう?いや、そんなことないんじゃない?」
卑下するようなハロルドの言い方に異を唱えるが、目だけで黙らされる。
(俺、主人だよな?)
「それも全て、勇者の量産によるものです。勇者は加護の力もあり、人ならざる力を持つため、我々魔族が倒そうとすれば、多数の犠牲が出るでしょう」
だからこそ、と言ってハロルドはヴァルの肩をがっしと掴む。
「我々には魔王様が必要なのです。ダンジョンに自らが赴くなど、笑止!魔王様に万が一、何かがあっては我らは滅びの道を進む他ありません」
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