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「あの・・竹野さんも今日は自転車じゃないんですね」
「今日はバイトが休みだったからちょっとドライブがてら実家に行って、その帰りなんだ」
そういえばこっち出身ではないと前に話していたのを真央は思い出した。
「実家って、遠いんですか?」
「いや別に・・」
少し間をおいて竹野がボツリと呟いた地名は、偶然にも真央の兄が進学した大学のある所と同じだった。
それを告げると竹野はそう、と短く返した。さして興味も無さそうに。
「じゃあ、竹野さんも進学でこっちに来たんですか? うちの兄みたいに」
「いや・・・言ったかもしれないけど、俺は高2の時に転校してきたから・・」
「あ、そう・・そうでした。でも随分変わった時期じゃないですか────親の仕事の都合とかですか?」
真央が通っているのは公立の商業高校なのでまず転校生はいない。
「・・・いや親の仕事は関係なくて、高2の夏休みにちょっと色々あって、環境を変えたほうがいいって周りに勧められて、それでこっちに移り住んできたっていうか・・」
予想外に深刻な理由を聞かされて、真央はどう返事してよいものかと悩んだ。
「・・すみません。聞いちゃいけない事でした」
「いいよべつに。・・・もう随分前の話だから」
真央がチラリと視線を上げると竹野の表情は優しかった。
よかった怒っていない─────安心した真央はおずおずと口を開いた。
「────竹野さんていくつなんですか。あ、男の人に年齢を聞いたりすると失礼だったりしますか」
男女交際初心者の真央の会話スキルで思いついたのは何とも微妙な質問だった。
「別に聞かれて困るものでも・・・25歳だけど」
「えっ・・・えええっ!」
真央は驚きでドアの内側に勢いよく背中をくっつけ、落ち着いた表情でハンドルを握る男の顔ををまじまじと見つめた。
「嘘・・・じゃあ、私より8才上? そんな・・・見えない」
真央はすっかり敬語も忘れ思ったことをそのまま言葉にした。
高校生から見れば八才も年上の男というのはもっと、色んな意味で大きくて包容力のある大人だと思っていた。
「・・・えっと、若く見られますよね? 私だけじゃないですよね」
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