黒歴史

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「かわいそう~!私が慰めてあげるからね☆」 頭をナデナデして貰うが、当人は涙目のまま恨み言を呟く。 「でも、20歳越えたら付き合ってくれないんでしょ?」 「お金貸してって言わなければ、友達にはなってあげるから大丈夫よ☆」 女子は現実的だなぁ。 しかし。 「この観察日記って、自分で育てたヘチマじゃなくて学校のヘチマじゃないか?」 「さすが、委員長!よくわかったね!」 悪びれもなくバカが答えるが、わかって当然。このヘチマは植物大好きな私が一番大きな実にヘチ子と言う名前を付けて自作ソングまで作り、愛情たっぷり手塩にかけて育てたのだ。 「自分で育てるから観察日記でしょ?あんたあのヘチマに何かしたの?」 「見てただけ~。だって観察だもん!」 とりあえず、ヘチ子がこのバカの毒牙にかかってなくて一安心。 「でも、ヘチマって食べられないよね。食べる物植えたら良かったのに」 「ヘチマ、食べられるよ?沖縄の郷土料理にあるもん」 すっかり宿題を写す手が止まっているが、敢えて言うまい。 「へぇ。美味しいのかな?委員長、作ってよ!」 「嫌だよ。それに、あのヘチマはもう食べられる時期逃してるよ。タワシにするんだから」 そう。自作ソングはヘチ子が素敵なタワシになるまでを歌いあげているのだ。どこの馬の骨とも知れない輩の口に入ってたまるか。 「委員長は何でヘチマに詳しいのさ」 私は不敵な笑みを浮かべる。そう。この学校には不気味ちゃんと呼ばれない素敵な隠れ蓑があるのだ。 「私、園芸部だもん。あれ植えたのうちの部だよ」 部員の99%は幽霊部員で構成されているとは敢えて言うまい!活動してるのは私1人だ。ついでに言うと、私は委員長でも何でもない。 そんな感じで山田アキラはほとんど書けていない宿題を先生に奪われて始業式とホームルームが終了。 身支度を整えてヘチ子の様子をいそいそと見に行ったら、既に先客がいた。 「山田アキラ。ヘチマの観察日記は終わったはずだ。なぜ貴様がここにいる」 「や、なんか毎日見てたから愛着が湧いちゃってさ。料理に使えるんなら、1個貰おうかと思って委員長待ってた」 泥棒しないのは褒めたいところだが、目線の先にはヘチ子がいる。ダメだ。ヘチ子はやれない。
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