婚約者のパラドックス

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教室の戸を開けたら、そこには1人の知らない大人の女の人がいた。タートルネックのニットにタイトスカート。足元はブーツ。髪はブラウンのセミロング。顔は可愛くて、俺のドストライクで正直ドキッとした。 教室のど真ん中で立ち尽くしていた女は、入り口で固まる俺を見て言った。 「しょうちゃん?」 声も可愛い。 「え? ああ、はい。え?」 確かに俺の名前は“翔”だけど――… 女はヒールを鳴らしてツカツカと俺に歩み寄り 「こんの裏切り者ー!!!」 罵声と共に俺の頬を思い切り平手打ち。衝撃で教室の壁にぶつかって思い切り背中を打った。凄い剣幕と痛みで茫然とする俺の学ランの胸倉を掴み女は言った。 「誰のことが好きなの! 言いなさい!」 「えええええ」 明らかに学校関係者じゃない不審者。しかもいきなり暴力って相当ヤバい。でも可愛い。いやヤバい。でも可愛い。 女は俺に怒鳴りつけるように言った。 「私は10年後の未来から来た、あんた“佐伯翔(さえきしょう)”の婚約者! 梅野瑞希(うめのみずき)! あんたに傷つけられた被害者だよ!」
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