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「……っ仲良くない……もん! だって翔ちゃん好きな女がいるって、いきなり……」
泣き出した瑞希さん。
「いや。そんなはずは――…」
大人の女の人が号泣しているのなんて初めて見た。そりゃ5年付き合って結婚目前だった彼氏に“好きな女がいる”って言われたら泣くよな。どんな酷い男だ。
って俺か。
俺?
いやいやいや。ないない。だって今までの人生でモテたことなんてない。現に高校ももうすぐ卒業なのに誰にも好きになってもらえなかったし何なら男友達すらいない。
瑞希さんと付き合い出したのは23才。まさか華麗な大学デビューを果たして女タラシにでもなったのか、俺。いや、ありえないな。
「あの……瑞希さんと俺が付き合い出したきっかけって――…」
「え?」
瑞希さんが涙を拭って顔を上げた。そして顎に手を当てて上を見ながら、うーんとうなった。
「……ナンパ。翔ちゃんから」
「い゛い゛ぃぃ! 嘘だ! ありえない!」
やっぱり大学時代におかしくなったのか? 非社交的な俺にナンパなんて上級なことできるわけがない。しかもこんな美人相手に。
瑞希さんが頬を膨らませた。
「ホントだもん! 私がスーパーで買い物してたら翔ちゃんがいきなり『トマト美味いっすよね。ひひひ』って」
「なにそれ、キモ」
そのいけてない、というか不審な声のかけ方は確かに俺かもしれない。何考えてたんだ23才の俺。
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