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車が急停車したおかげで、霧吹が持っていた赤ワインが豪快に白スーツにぶっかかった。それはまさしく『血』にしか見えない。
「てめ、こら! 何やってんだよ!」
さすが関東のヤクザは迫力にかける。これが関西だったらドスのひとつも利かせるのだろうが、ここは大都会東京だ。関西弁は今のところ必要無い。江戸の言葉で話しがまとまる場所でもある。
「若! 大丈夫ですか!」
前につんのめった次郎がまず若と呼ばれた霧吹を気にし、両手を伸ばす。
「これが、あ、大丈夫に見えるか? ああ?」
「ちちちちちちち血が!」
自分の胸元が真っ赤になっているのを見て、心臓を抑えながらうろたえる霧吹に、ムンクの叫びのようになる次郎はそのまんまコメディとしか思えないが当の本人たちは本気だ。
本気で『もう危ない』と思っている。
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