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同じ日、大安吉日の雲一つ無い青空。初夏の快晴は誠に清々しい。
「まずはヤニが先だ」
清々しくない声が聞こえる。
すーっと吸い込む呼吸音が聞こえ、止まる。っはーっと吐き出す煙には、ジッポオイルの香りも混ざり合う。
と、生まれたての子馬のように、よろよろと2、3歩後ろに後ずさる真っ白いスーツの男。
霧吹 将権(きりぶき しょうけん)だ。いかさまチックな名前だが、証券会社の名前ではない。歴とした人物名だ。
「若!」
咄嗟に手を伸ばす若い衆の手を払いのけ、いやいやなんてことねーよと大丈夫だということをアピールした。
「2年振りのシャバだからな、たばこの煙に肺もびっくりだなこりゃ」
ガハハハと左右に首を振りながら笑う様は、その端正な顔から想像するには幾分はばかれる。
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