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「おい後藤。血迷うのは二次元の中だけに留めておけ。これ以上踏み込めば、その先に待つのは逮捕だ」
俺は両手を後藤の肩にやり、真剣に諭す。
すると、俺に負けず劣らずの真剣な顔つきをした後藤が、言った。
「この子を今から、俺の車でT県まで連れて行く」
……
はぁぁぁっ?!
T県といったら、ここから車で片道6時間はかかる場所だ。
「何をどうしたらそんな話になるんだよ?!」
ーー話は、こうだった。
今日はお兄さんに頼まれたお使いで一人、この都会まで来ていた事
こちらで一泊する予定だったが、さっきT県にある自宅から連絡があり、お祖母さんが倒れたと知った事
急遽帰宅を決めたのだが駅で切符を買う段になって、リュックが裂かれ中身が全てスられていると気付いた事
ーー 財布もスマホも失くし、途方に暮れていた所を後藤に捕まったようだ。
「……お前、金貸してやったら?」
「クレジットしか持ってない」
「警察に行ったら?」
「急いでんのにそんな悠長な事やってられないだろ」
「ん、了解。じゃあ、お前が責任を持って送り届けてやれ」
「今日の運転は完全にお前に丸投げしようと思っていたから、免許持ってきてない」
「死ね。」
……で?
……俺に運転しろと??
「ちょうど、明日明後日休みだろ。謝礼は、弾むよ」
「……」
俺の視界に、目を潤ませた、か弱そーな女の子の姿が入った。
あぁあぁああーーーーー!!!
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