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心のなかでそうツッコミながらすくっと立ち上がり、2人がいるテーブルの空いているイスに座った。おばあちゃんが話しだす。
「神社の賽銭箱に5円玉をね、真ん中を赤い糸で結んだのを入れてお願いをするの。恋が実りますように、ってね」
少し照れたような感じで話すおばあちゃん、一瞬だけど乙女に見えた気がした。「そのときの恋は、どうなったの?」と私は思わず聞いてしまっていた。
「ふふ、そうねぇ。何せあの頃の恋は、友人に相談したり、ましてや好きな人に想いを伝えるなんて、時代もあったのだけど、とても臆病だったから。神様にお願いするので精一杯で。あの神社が無くなるって知って、今改めて思い出すと、あの時の想いを伝えときたかったなぁ、って。今風に言うとセンチメンタルな気持ちになるというのかねぇ」
と優しい口調で答えてくれた。
「そっか…」私は少し下を向きながらつぶやいた。あとセンチメンタルな気持ちってあまり今風じゃない気がするよ。
「香菜にもそいうときがいつかくるかもねぇ」
「えっ!?」
「んん~? それはいったいいつやら」
「なっ!?」
おばあちゃんの不意打ちのような言葉に、お母さんのいたずらな言葉にほんろうされながらも、神社についてのエピソードをまた少し聞いた後、私は部屋に戻ってベッドに横になった。またケイタイを手に取り、3人でのグループトークを眺める。今日の文化祭でのイベントや出店周りの話。それで最終日には一緒に周ろうという話…。早く寝ようと思ったけどなかなか寝付けない。…よし、ベッドから身を起こし、机の引き出しを開けて、ある物を探し出したのだった。
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