0人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもなら通り過ぎる小高い丘を登り頂上に辿り着くと、そこには古びた神社があった。境内に続く石畳は少しヒビが入っていたり、雑草がひょこっと顔を出していたりと、まあ確かに取り壊しもうなづけるような感じだった。
ほんとに縁結びの神社として人気があったのかな…、まあでもここまで来たんだし。
ところどころ苔に覆われた鳥居をくぐり、前へと足を進めていった。
え~っと、神様のいる場所、ちょっとしたお屋敷? いや違うな、なんていうんだっけ…、まあいいや、お屋敷で。ここはまだまだ現役って感じだなぁ。赤やオレンジに色付けされてる部分はキレイで色あせていないし、金色の金具みたいなのもピカピカで。取り壊すのもったいないなぁ。
首をぐるーっとまわしながらしばらく眺めていた。
むっ! あんまり時間ないし早くしないと。
財布から5円玉を、赤い糸で結ばれた5円玉を取り出した。
…、っつ! くはぁ! 私は何をしているんだ! 乙女なのか私は! 高校2年生にもなって! うぅ、でもここまで来たんだから!
と賽銭箱の真上に赤い糸で結ばれた五円玉を、真上まで持っていく。が中々手離せない。
んんっ…! ちょ、ちょっとタイム!
お賽銭を持った手を引っ込めた。ふぅーっとため息がでてしまう。
ほんと、朝の登校時間帯で、人気がない神社でよかったよ。
こんなところ誰かに見られたくないからね! よし!
活きこんでもう一度5円玉を賽銭箱に持っていこうとしたときだった。
「こんにちは」
「いっ!? わわっ!?」
後ろから声を掛けられ、思わずお賽銭を落としてしまった。
チャリーン、チャリンと落ちた音だけしかひろえず、とりあえず声がした方に
振り返る。
わあっ…! とてもキレイな人。
小さな顔立ちに、くっきりとした眼や鼻先。白くて透きとおるような肌はちょっと触れたくなってしまう。腰くらいまであるつややかな黒髪を1本に束ねている。そして巫女さんみたいな恰好をしている、というかきっと巫女さんだ。こんな人がいたなんて。
最初のコメントを投稿しよう!