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夜空が世界を覆う深夜零時頃。豊かな自然と海に囲まれた都市朽木市の上空には二つの線が衝突し合っていた
一つは黒味のある紅い線。もう一つは夜空の黒から浮き上がった漆黒の線だ
それらは互いにぶつかりあってはその周囲に残光を散らしていた
そして、二つの線が止まった
「相変わらずしぶといなあ。紅の魔術戦士(ルーンライナー)」
「しぶといのが俺の強みでね……」
紅の線を描いていたのは、やや黒味のある赤髪の男だった。しかしその姿はボロボロで、顔には幾筋も切り傷があった
対して目の前にいる男は無傷だった。身体の周りを漆黒の霧が揺らめき、男をまるで守るように包み込んでいる
黒髪の男は腕を振り上げる。霧がその腕に絡みつき、まるで剣のように尖った
「じゃあ、そろそろ終わりにするか?」
その問いに、赤髪の男は剣を構えて答えた
「俺好みの答えだ」
『いや、どう考えてもここは撤退するべきでしょうマスター。馬鹿なんですか?死ぬんですか?』
不意に甲高い少女の声が響いた。発生源は赤髪の男が服の裾に吊り下げてあるアクセサリーからだ
「……せめて死ぬなら格好いい方が良いだろう?イフ」
『貴方が死んだら自分も死ぬんでそんな安いプライドとっとと捨てて逃げてください。サラマンダーより早く』
「……前々から思っていた事だが、どうやら俺と君の相性はすこぶる悪いらしいな」
『そんな事紀元前から分かっていましたよ。あーあ、なんで私こんな不幸非モテ系イケメンなんてマスターにしたんだろう……恨みますよ過去の自分』
「っ……言わせておけばこの石ころ……!」
「仲間割れは大いに結構。だが戦闘中に余所見は感心しねえな?」
「!?しまっ……」
気付いた時には、もう黒髪の男は目の前までこちらに接近してきていた。慌てて剣を振ろうとするが、それよりも速く黒髪の男の拳が繰り出される
そして、赤髪の男の腹部に炸裂した
「がはッ……!?」
赤髪の男の身体がありえないスピードで後方に吹っ飛ばされる。しかしそれに一番驚いていたのは殴った本人であった
「……!なるほど。そういう事か……面白え」
黒髪の男は赤髪の男が吹っ飛ばされた方向ーー大小様々並ぶ住宅地に視線を向けてそう言った
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