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正確に言えば『大きくなっている』。それも現在進行形で
しかしそれは実際に巨大化している訳でもなく、光量も変化している訳でもない。恐らくこれはーー
「ち、近づいてくる……!?」
間違いない。あの光源体はこちらに近づいて来ている。それも結構な速度で
そう気づいた時にはもうアデルの身体は窓から反対に向いていた
「や、やば……!」
逃げなければ。そう思い足を上げーーようとした。人間とは焦っている時に限ってよく失敗するものだ
要するに、アデルは上げようとした右足を浴槽の壁に当てて躓いてしまい、そのまま湯船にダイブしたのだ
ザブンと派手に水飛沫が上がる。ちなみにアデルの家は他の家よりも少し大きく、浴室も中々に広い
そして浴槽も例外ではない。それなりに深さがあるのだ。アデルはもがいて、水中から顔を出した。そしてその上を猛烈な勢いで何かが通過した
ビュンと風を切る音。そしてズドーンという、それなりに質量のある物体が落下してきた音
「…………」
反射的に水中にへと戻してしまった身体を出す。そして恐る恐る『何か』が飛び込んできた先を見た
そこにいたのはーー
「ひ、人……!?」
そう。人であった。しかし、その姿はボロボロで、いかにも満身創痍という状態だ
そして
『避けられましたか』
第三者の声。それは甲高い少女にような声だった。なお驚くのはその声が男の方から聞こえてきたことだ
「なっ……」
『おっと、あまり驚かないでほしいですね。たかが男が空から降ってきたくらいで』
「い、いやいや!それに驚かーーてか誰!?」
『自己紹介が遅れましたね。私は紅のルーンコア、イフと申します。以後お見知りおきを』
と、倒れている男の懐がモゾモゾと蠢き、そこから出たのは紅い宝石を囲むように金の線が幾重にも重なった、凝った意匠のアクセサリーだった
それはフワフワと浮遊し、そのまま宙に留まる
「う、浮いた!?喋った!?」
『いきなりですが、貴方は見事紅の魔術戦士(ルーンライナー)に選ばれました。さあ、この私を手に取って、共に大いなる闇と戦いましょう』
後に、アデルはこの時のことをこう語った
「ええ。俺も直感でこう思いました……これはあからさまに胡散臭いと」
まあ、この直感は正解だった
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