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教室の戸を開けたら、そこには不思議な空間が広がっていた。
おおよそ屋内とは思えない、運動場くらいの広い空間。縦長の黒い立方体が、ビルのようにいくつも立っている。
足下は、黄色と赤色のまだら模様を作る絨毯のようだが、爪先で叩いてみるとコンクリートのように固かった。
黒い建物の間をすり抜けながら少し進むと、まだらの床は途切れ、眼下で何かが右から左へと流れていった。
そこに目を落とす。
流れているのは、透き通っているが、薄い緑に着色された、何かである。
それはまるで川の水流を連想されるような光景だが、流れているのは水ではない。透き通る、何かだ。
その透明な空間の中には、丸やら三角やら四角やらの図形を適当に組み合わせたかのような生物が泳いでいた。
身体をくねくねと動かして、一直線に進んでいる。
もっとも、そこに水分はないため、泳いでいるという表現が適切なのかはわからない。生物かどうかもわからない。
やがて、遠くの方から爆発音のような激しい音が聞こえた。
その方向に目をやると、そこだけが何やら明るく光っていた。黒い建物の間を光が通ってくるため、余計に目立つのだ。
その色は、火の手が上がっているかのようなオレンジ色だった。
だが、その造形の輪郭は炎のようにあやふやではなくて、はっきりと角ばっている。例えるなら、大量の四角いドットを無数に打ち付けて、炎を描いたようなものだ。
以下、略――。
『サンプル②』
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