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いつもあたしに話すときと変わらない澄ました喋り方で、お兄ちゃんは来客用のソファーへ指を向ける。
「適当に座ってくれ。今妹がお茶の用意をしている。ここへ来たということは、仕事の依頼と期待して良いんだろう?」
言いながら、自分が指し示した場所へ移動するお兄ちゃん。
女性も、その正面へと腰掛けながら興味深そうにあたしを見上げてきた。
「へぇ、この子が恭一の妹さんだったの? 何度か話を聞いたことはあったけど……ふぅん、あんまり似てないのね」
「それはそうだ。血の繋がっていない妹だからな。オレが高校一年のときに親父が再婚して、今の母親が連れてきたのがそいつだ」
そいつ呼ばわりかよ。
胸中で毒づきつつ、あたしはお兄ちゃん用のコーヒーを若干乱暴にテーブルへと置く。
「お兄ちゃんのお知り合いなんですか?」
薄く笑う女性へ余所行きの笑みを返しながら、あたしは探りを入れる。
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