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最後の一言はお兄ちゃんへ向けて言いながら、絵馬さんはにこりと笑う。
「別に話しかけられたから答えていただけで、オレから仲が良くなったと実感したことはなかったけどな。さて、どうでも良い話はこれくらいにして本題に入ってもらおうか」
あたしがお茶の用意を終わらせるのを見届けて、お兄ちゃんはすぐに仕事モードへ意識を切り替えた。
久しぶりに知り合いが訪ねてきたんなら、もう少し思い出話とかすればいいのにと思ったけれど、そんな気の利いたことできる性格じゃないから無理かと勝手に納得する。
「せっかちね。私がどうしてこの場所のことを知ったとか、気にならないの?」
用意したコーヒーをゆっくりとした動作で一口だけ飲み、絵馬さんは上目遣いにお兄ちゃんを見る。
「特には。どうせ実家か共通の知り合いから事情を聞いたんだろう? 何人かオレの仕事を把握している奴はいる」
「素っ気ない返事。まぁ、正解だけどさ」
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