第一章:偽りの招待状

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「それは当然。お金はいくらくらいでやってくれるの? 他人じゃないんだし、少しくらいはおまけしてほしいけど」 期待するような眼差しをお兄ちゃんへ向ける絵馬さんだったけれど、残念なことにお兄ちゃんは全く見ていない。 何事かを考え込むように手元のコーヒーを見つめて、少し間を置いてから伏せていた瞳を絵馬さんへ戻した。 「報酬は、全てが終わった後で良い」 「え? 後払い?」 「ああ。こういう特殊な仕事は正直想定していなかった。移動費にいくらかかるかもまだわからないし、現地でどんな活動をすることになるかも検討がつかない。だから、全ての片がついてから相応の金額を請求させてもらう。こっちも商売なんでな、特にまけてやろうという気持ちはないからその辺はシビアにいくぞ」 事務的な口調でそう告げて、お兄ちゃんはコーヒーを飲み干す。 それに対して絵馬さんは不満そうに唇を尖らせてみせたが、残念なことにお兄ちゃんの意見が覆ることもなく。
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