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庭からすぐの、山へ入った帰り道。
秋も深いというのに残暑厳しく、汗が流れ落ちる。足だけは進むが、息は切れ、ついには気分が悪くなってきた。
慣れた道の筈。だが、先ほどから見覚えのある風景に出会わない。
迷った。
それを認めると、ほんとうに焦りそうで、
せめてどこかで休めればと、獣道をたどる。
国道とは名ばかりの、人通りの殆ど無い山道の、そのまた奥でカフェを営む彼の名は、桜木という。
優男然として色白、街を歩けばまず女子が振り向くだろう美人である。
秋も深くなり、旬の味覚や店の彩りに何かあればと、散歩程度に山へ入ったのだけれど。
あけびの蔓を引きそこね、斜面を滑り落ちてしまった。
少し下の方へ落ちただけと思い、歩き出したが、この有様だ。
そしてこの暑さ。
息を切らして行くうち、古びた小屋が目に付いた。
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